帰る途中、ある窓の下を通りかかると人間の声がしていました。

「ねむれ ねむれ 母の胸に、ねむれ ねむれ 母の手に・・・。」
「この歌声は、きっと、人間のお母さんの声だな。

だって、ぼくが眠る時にも、やっぱり母ちゃんは、こんな優しい声で歌ってくれるもの。」

すると、今度は、子どもの声がしました。

「お母さん、こんな寒い夜は、森の子ぎつねは、寒い寒いって、泣いてるよね。」

「森の子ぎつねも、今頃、ほらあなの中で、お母さんぎつねのお歌を聞いて寝るところでしょうね。
さあ、坊やも早くねんねしましょ。森の子ぎつねと、坊やと、どっちが早くねんねできるかな〜。きっと、坊やのほうよね。」

それを聞くと子ぎつねは、急にお母さんが恋しくなって、母さんぎつねの待っている方へ飛んで行きました。

てぶくろを買いに14
作:新美 南吉 絵・音声:亀崎小学校PTA図書部



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